2009年08月12日

「伊藤の話」

「伊藤の話」
2008年製作 日本
監督:秋原正俊 原作:小泉八雲『伊藤則資の話』 脚本/編集:落合雪恵 音楽:スティーヴ・エトウ
出演:温水洋一、田丸麻紀、加藤夏希、江口のりこ、市川男寅、十日市秀悦、今村祈履、烏丸せつこ

秋原正俊監督が小泉八雲(パトリック・ラフカディオ・ハーン)さんの小説『伊藤則資の話』をモチーフに舞台を現代の青森は八戸久慈にして、温水洋一さん主演で映画化したファンタジードラマ作品です。

拙ブログの投稿記事にて秋原正俊監督による映画作品を取り上げるのはもう今回で6作目になりますが、本作にもまた魅せられてしまいました。新たに作品を観る毎に濃くと深みが増して感じられる秋原監督独特の、透明感があって、淑やかで上品なセンスが感じられる演出、映像とその描写・表現と出演者の飾らない演技が織りなす不思議で微妙でデリケートな趣、雰囲気やテンションとそして体感しているかのように感じられる空気感をした(魅惑的な)魅力に益々惹かれて飽きません。画面に映し出されているものの雰囲気や空気感のみならず、音までもが感じられるようでもあって、とにかく妙に惹かれるものがあります。日常のそこここに見受けられるような何でもなさ気な被写体や場面の切り取り方、カメラワーク、フォーカシング、レイアウト、構図、構成、唐突だったり、ぶっきらぼうだったり、ざっくりとしているやに感じられる繋ぎも見受けられるものの、テンポの良いカット割と編集の妙や光の使い方による描写の仕方に至るまで、とても興味深く、フィルムに撮り切れては...切っては、画面に映し切っては...切れては、描き切っては...切れてはいないものが感じられて、想像力を掻き立てさせられるものがあります。構成(展開)は、もしかしたら絶妙やも知れません...。一見何でもないようなありきたりなようなオープニングのタイトルバックの刺々しく険しく且つ美しくインパクトある何の林なのかの景観の映像と音響からして眩惑されるが如く、どっぶりと魅了されてしまいます。有機的なのに無機的に感じられるカットバック・インサートされる自然の風景・情景描写にはその美しさや不気味さの中に何かを感じさせられます。作品全体にも濃くと深みが増して感じられる気がします。落合雪恵さんによる脚本と編集にも妙を感じます

幻想的で、神秘的で、怪奇的ながら、おどろおどろしい恐怖、不気味さや毒気の押しつけはなされておらず、日常のそこここ(の片隅)に見受けられるような不思議や、そして何というか、イメージを超越したかの幻想と現実の交錯が、日常・日情感がひしひしと感じられる体感的な雰囲気や空気感をもって大人しく、何やら透明という色が感じられるように感覚的に描かれているやに見受けられて、何とも魅惑・眩惑的に魅力的で惹かれます。本作も残念ながら原作は未読ですが、見事な、もしかしたらそれ以上の映像化なのではないかとすら感じます。
日常に異界がいつしかふと、静かに、密やかに浸食するというような片隅感が、抗えない因縁の哀しさ切なさ残酷さ不気味さや不安を増し、深めて感じさせるような気がします。

温水洋一さん演じる"伊藤則資"がビジネス学科の教授として赴任することとなった八戸大学へ向かうタクシーの中で、以前教師として勤務していた熊谷の女子校の卒業式を回想するシーンのひっそりと冷ややかな描写、教室に舞う塵のそれには何やら堪らないものを感じたりもします。江口のりこさん扮する彼の同僚の冷たく理不尽な英語女教師のスピーチはもっともらしいようで何を言っているのか良くわからなくもあったりします。彼女が抱くエゴセントリック・エゴイスティックな人生の美意識というか、美しさに対する幻想への執着心が卑しく嫌らしく恐ろしいものにすら感じられたりもします。"伊藤"と田丸麻紀さん扮する助手の"寺島みや子"が何気ない会話を交わしながら大学の渡り廊下を歩く二人を後方から撮ったシーンなぞも何だか意味あり気で、とても印象的に感じたりもします。

"伊藤"を主演している温水洋一さんは、全く違和感無いどころか、むしろ役にピッタリマッチして見えてくる味と濃くのある演技を見せてくれていて、二枚目にさえ映るところもある気もします。一見冴えない新赴任の教授、"伊藤"に秘かに心惹かれゆく控え目のようで積極的な助手の"みや子"を演じている田丸麻紀さんは、そのすれていない自然体の演技と醸す清楚で無垢な雰囲気と存在感が素敵で好感が持てます。スタスタした感じやチョッとした所作に彼女なりの演技のリアリティーが感じられるようで面白かったりします。自分を大学に迎えた直後、突如失踪してしまった十日市秀悦さん演じる"小田島"教授の行方を探るべく、自分を推薦してくれたという"琥珀館"の女主人を訪ねた帰り道の"伊藤"を奉公しているという屋敷へと招く古風な言葉遣いの少年に扮している市川男寅さんは、以前の投稿記事で取り上げています秋原監督が宮沢賢治さんの名作童話『銀河鉄道の夜』を現代の東北地方を舞台に映画化した文芸青春ドラマ「銀河鉄道の夜 I carry a ticket of eternity」での可愛らしかった"カムパネルラ"役から随分大人びて映ります。凛々しい目をしています。江口のりこさんは少ししか出演ていませんが、個性的なインパクトある演技、存在感と雰囲気で"伊藤"の元同僚の冷たく理不尽な英語女教師を妙演して見せてくれているやに思います。見目麗しき屋敷に住まう姫君を演じている加藤夏希さんは、重要な役ながら、出演シーンがごく僅かなこともあってか、印象に薄くて、魅力ある女優さんやに思うだけにチョッと残念な気がします。"琥珀館"の女主人にして姫君の乳母に扮している烏丸せつこさんも何となく印象に薄い気がします。もっと灰汁のある演技を見せて欲しかった気もします。

いちご煮、締め鯖に八戸ラーメン(お稲荷さん付き)...もっと食事をするシーンを盛り込んでくれても良かったかなと思ったりもします。

千年の因縁と共に久慈の屋敷に住まう長き眠りから目醒めしいにしえの目見麗しき琥珀の妖精の姫君...差し詰め千年カマキリ姫たるあやかしか、魑魅魍魎...に焦がれられ、惑わされ、魅入られたことで、自らの日常現実への幻滅に気づかされるのか、眩惑・錯覚させられるのかして、そして魂を彷徨わせ浮遊させられて、異界へと境界を越え誘われる...愛というのだろうか、如何わしくピュアで、哀しく切なく残酷な想い...迷惑な話...としても...。
ハーロックは宇宙(そら) へ...素子は情報の海へ...そして伊藤は...。
かけがえのない何かを見出してしまったことによる孤独と愁いに満たされぬ自分と自分の心、思・想いに突き動かされ、誘われているかのようで...何やらペーソスとシンパシーを感じる気がします...。

今市子さんの人気妖怪・ホラー・ミステリーコミック『百鬼夜行抄』好きとしても堪らないものがあります。

まどろみにふと現実と異界の狭間の迷宮に陥り、彷徨ってみるのも...。

思い入れのせいもあってか、今回も久方振りの投稿だというのに、またかなり支離滅裂な苦しい記事となってしまいました。語彙、表現力、文章力のなさがもどかしいです...。

*心覚え(作品中に登場する台詞・人物・言葉・事物等)
"たつとりあとをにごさず”
"因果性に共時性と受け取れる事象をかけ 交わることのない因縁の別離したバランスを開放し浮遊する そのバランスは無数の(に)根を張り (そして)絡まり 一つの因果として(なって)開放されるのだ (私は)その共時性と受け取れる(思われる)ような事象を (その)浮遊した(自分)自身を安定させるために(開放することを)”
"その内行ってみましょうか"


先日までは涼しい日が何日か続きましたが、夏の暑さもまだまだこれからだと思います。そこでこの夏、暇なお休みの日にでも、がっつりというのではなく、ゆったりとリラックスした気持ちで観れそうな映画作品を過去の投稿記事で取り上げた中からとそれ以外から二三挙げてみたいと思います。まず一本目は大林宣彦監督が「尾道三部作」の第一作とされる青春ファンタジックコメディ映画作品「転校生」の原作ジュブナイル『おれがあいつであいつがおれで』、完結編とされる青春ファンタジックロマンス映画作品「さびしんぼう」の原作ジュブナイル『なんだかへんて子』とノスタルジックファンタジーロマンス映画作品「はるか、ノスタルジィ」同名原作小説に続き児童よみもの作家(児童文学作家)の山中恒さんのジュブナイル『とんでろ じいちゃん』を脚本をも手掛けて映画化した「新・尾道三部作」完結編となる若草の香るような熱く、濃く淡い、切な気な想いの思い出と想・思いやつきまとう苦い記憶と悔恨の念などの想・思いの継承のファンタジックな描写が絶妙な気がするファンタジードラマ作品「あの、夏の日 〜とんでろ じいちゃん〜」です。二本目はスティーヴン・スピルバーグ監督の大ヒット海洋生物サスペンス・パニック・アドベンチャー映画作品「JAWS/ジョーズ」原作と脚本を手掛けている(TVレポーター役で出演もしています)ピーター・ベンチリー自らがトレイシー・キーナン・ウィンと共に脚本化した自身の同名小説をピーター・イエーツ監督がロバート・ショウ、ジャクリーン・ビセット、ニック・ノルティやルイス・ゴセット・Jrら共演で映画化した中々サスペンスフルで結構な迫力を感じる海洋アドベンチャーサスペンス作品「ザ・ディープ」です。三本目は古屋兎丸(ふるやうさまる)さんの短編漫画集『Wsamarus 2001』に収録されている同名の一遍をミュージックビデオ出身で本作が映画監督デビューとなるウスイヒロシさんが加藤ローサさん主演で映画化した胸騒ぎを覚えるような危う気でファンタジックでメルヘンチックな清涼感ある清々しく綺麗なドラマ作品「いちばんきれいな水」です。そして、おまけとして佐藤竜雄監督によるTVSFラブコメディロボットアニメ作品『機動戦艦ナデシコ』の続編に当たる劇場版アニメ作品「機動戦艦ナデシコ -The prince of darkness-」です。「あの、夏の日 〜とんでろ じいちゃん〜」につきましては、尾道の空の色の青さをはじめ映像は瑞々しく鮮やかで、趣きも感じられますし、暑い夏の映像描写なぞには懐かしき少年(子供)の日を思い出させられるようで、秀逸に感じられます。「ザ・ディープ」につきましては、クライマックス、海底に沈む難破船内で繰り広げられる対決シーンはドキドキハラハラ、エキサイティングで見応えあるやに思いますし、クールで知的に美しくエネルギッシュでセクシーな日焼けしたジャクリーン・ビセットの肢体(白いTシャツ姿)と青く美しい海が眩しくて心地良く、魅惑的に感じます。「いちばんきれいな水」につきましては、とにかく11年間眠り続けていた現代の『いばら姫』"谷村愛"を演じている加藤ローサさんの可愛さ綺麗さに魅了されてしまいます。「機動戦艦ナデシコ -The prince of darkness-」につきましては、冒頭、タイトルデザインがスクリーンに浮かび上がるシーンは何だか、何とも(夏)休み映画っぽい感じがしたりします。

allcinema ONLINE 映画データベース

時効事案も含めて未解決事件が一つでも多く早期の解決を見ることを望むものです。
posted by ウォルター at 13:58| ☁| Comment(0) | TrackBack(1) | 鑑賞映画について(邦画) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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