2007年02月05日

「ブロークン・フラワーズ/BROKEN FLOWERS」

「ブロークン・フラワーズ/BROKEN FLOWERS」
2005年製作 米国
監督/脚本:ジム・ジャームッシュ 製作:ジョン・ギリク、ステイシー・スミス 撮影:フレデリック・エルムズ プロダクションデザイン:マーク・フリードバーグ 衣装デザイン:ジョン・A・ダン 編集:ジェイ・ラビノウィッツ 音楽;ムラトゥ・アスタトゥケ
出演:ビル・マーレイ、ジェフリー・ライト、シャロン・ストーン、フランセス・コンロイ、ジェシカ・ラング、ティルダ・スウィントン、ジュリー・デルビー、クロエ・セヴィニー、アレクシス・シーナ、マーク・ウェバー

ボケているのでしょう、先日近所のレンタルビデオ店に借りに行って貸し出し中のため借りることが出来なかったスパイク・リー監督、デンゼル・ワシントン主演のサスペンス映画作品「インサイド・マン」をあらためて借りに行った筈なのですが、すっかり忘れてしまい、本作他を借りて観ました。

ジム・ジャームッシュ監督は本作をかのヌーヴェルヴァーグの旗手、ジャン=リュック・ゴダールをして最後のヌーヴェルヴァーグと言わしめたジャン・ユスターシュに捧げる作品としていますが、残念ながら私は、彼の作品をまだ観たことがありません。

冒頭郵便配達員がビル・マーレイ扮する主人公の寡黙なかつてのドンファン、"ドン・ジョンストン(Don Johnstonはドン・ジョンソン〔Don Johnson〕のスペルに"T"が入るというのが面白かったりします)"へ物語の端緒となる”あなたの子供がもうすぐ19歳になるわ"との差出人のないピンクの封筒の手紙”を配達するシーンでの主人公の隣家"ウィンストン"宅の木漏れ日差す庭と主人公宅室内の透明感ある薄青暗い室内で独り赤いソファーに佇み、ぼんやりぽつねんとテレビ画面でダグラス・フェアバンクス主演の伝記的ロマンス・コメディ・ドラマ映画作品「ドンファン/THE PRIVATE LIFE OF" DON JUAN"」を鑑賞する"ドン”との対比が何とも言えない感じを受けます。ジャージに革靴でソファーに突っ伏して寝る姿も様になって映る気がします。"ドン”が聴く"ウィンストン"が"ドン”のために焼いてくれたCDに収められているマーヴィン・ゲイの『I Want You』をはじめとした曲が作品を哀愁深く彩り、"ドン"の心の内を映して感じます。"ウィンストン”家の子供たちが可愛いです。昔の恋人たちを訪ねる旅のバスで乗り合わせた女の子たちの会話が面白いです。シャロン・ストーン演じる昔の恋人の一人、"ローラ”を訪ねた時にアレクシス・ジーナ扮する如何にもロリータと言う感じの彼女の娘、"ロリータ"が"ドン”の前で肌も露に電話を掛けるのにはドッキリです。ジェシカ・ラング扮する昔の恋人の一人、”カルメン”がアニマル・コミュニケーターをしているというのは、何がしか示唆を含んでいるやにも思えて興味深いです。彼女は、その飾り気のなさが魅力的やに思います。 "ドン”とフランセス・コンロイ扮するかつての恋人の一人、"ドーラ”宅で"ドーラ”夫婦と夕食を共にするシーンで食しているのはツナステーキとライスでしょうか。

静かなシーン転換にしみじみさをより一層感じさせられるものがある気がします。かつての恋人たちを訪ねる旅、すなわち"ドン”自らの足跡の軌跡を辿る旅での車窓を行く情景にも感じ入るものがあります。雨降りにモーテルの回廊で佇む"ドン”の哀愁を帯びた後ろ姿と彼を包む空気感やかつての恋人の一人、"ベニー”を訪ねるべく人里離れた寂し気な田舎の林道を心細気に車を走らせる"ドン”には何とも琴線をくすぐられる感じがして堪りません。布石や遊び心めいたものの配し方も巧いやに思います。

ビル・マーレイの感情表現を抑え、押し殺して微妙なニュアンスで心模様を感じさせる演技は味わい深く見事やに思います。感情が滲み出るかのように微かな変化を垣間見せる哀し気、落ち沈み、切な気で虚ろな瞳の微妙な演技に惹き付けられます。ジェフリー・ライト扮する"ウィンストン"の俄探偵振りと反駁しつつも、言われるままに従う様が微笑ましく、面白いやに思います。うらびれ加減が何処かカッコイイ中年オヤジに映ります。ウィスキーが似合いそうです。何気ない所作にも格好良さを感じます。以外に走れるのですネ。

各々満ち足りているか否かはさておき、現在(いま)の人生を生きているかつての恋人たちと彼女たちの傍らにいる人たちを目の当たりにした"ドン”は何を感じ、彼の心の内には如何なる思いが去来し、渦巻いているのだろうと考えたりしてしまいます。

打ちひしがれた心に雨は潤いとなったのでしょうか、それとも追い討ちだったのでしょうか。

サスペンスフルな"ドン"の夢見のシーンは彼の思・想いを垣間見せているやに思え、遊び心も感じられもして、興味深いです。

エンディング曲、The Greenhornesの『There Is An End』は書き下ろしではないと思いますが、本作を、"ドン”の心の内を見事に歌っている気がします。

以前投稿記事で取り上げたヴィム・ベンダース監督・原案、サム・シェパード脚本・原案・主演のドラマ映画作品「アメリカ、家族のいる風景」と設定をはじめ似たところがありますが、より余韻を感じさせる作品やに思ったりします。

本作も何だかハッキリはわからないですが、心にじわっとしみ入る何かイイな〜という感じの感慨深い作品やに感じます。ジム・ジャームッシュならではの作品やにも感じます。何でかはいざ知らず、定かにもわかりませんが、"ドン”の心を覆うやるせなさなのか、切なさなのか、落胆なのか、喪失の悲しみなのか、不安なのかには何となく共感できる気がします。

大振りすると当たり難いのですからネ。

ジム・ジャームッシュは本作の脚本を2週間半で書き上げたとのことです。

*心覚え(作品中に登場する台詞・人物・言葉・事物等)
「過去はもう終わってしまった 未来はーまだこれからどうにでもなる だから−大事なのは つまり…現在だ」ー"Well, the past is gone, I know that. The future isn't here yet, whatever it's going to be. So, all there is, is this. The present. That's it. "
Greenhornes『There Is An End』
Words disappear, Words weren't so clear, Only echos passing through the night. The lines on my face, Your fingers once traced, Fading reflection of what was. Thoughts re-arrange, Familar now strange, All my skin is drifting on the wind. Spring brings the rain, With winter comes pain, Every season has an end. I try to see through the disguise, But the clouds were there, Blocking out the sun (the sun). Thoughts re-arrange, Familar now strange, All my skin is drifting on the wind. Spring brings the rain, With winter comes pain, Every season has an end. There's an end, There's an end, There's an end, There's an end, There's an end.

引用 The Internet Movie Database

allcinema ONLINE 映画データベース
posted by ウォルター at 00:14| ☀| Comment(2) | TrackBack(0) | 鑑賞映画について(外国映画) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
インサイドマンは、ジョディ・フォスターら俳優人のネームバリューに負けて観ました。(笑)スティングくらいのラストの面白さを期待するのは、もう酷な話なのでしょうか?(笑)
Posted by imagine-peace at 2007年02月05日 09:07
imagine-peaceさんへ

コメントありがとうございます。

流石に「スティング」程のラストの面白さを期待するとなると「インサイドマン」に限らず、大抵の作品にとって酷な話しになるのではないかと思います(笑)。

私はこの作品、つい先日ようやく近所のレンタルビデオ店でDVDを借りて観たばかりなのですが、今一つ捉え切れないというのが正直な印象です。詳しい感想や意見はまた追って記事として投稿出来たらと思いますが、お気に入りリンクで紹介しております「ごみつ通信 MOVIE LOVER'S DIARY」でのこの作品に関する記事と似た感想、つまり勝手やも知れませんが、スパイク・リーらしさが薄く、その点で物足りなさを感じているのやも知れません。

飽くまでも私的にですが、騙し映画で「スティング」に匹敵すると思われるのは、デビッド・フィンチャー監督の「ゲーム」くらいでしょうか...。
Posted by ウォルター at 2007年02月05日 12:40
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