2007年05月15日

「トゥモロー・ワールド/CHILDREN OF MEN」

「トゥモロー・ワールド/CHILDREN OF MEN」
2006年製作 米国/英国
監督/脚本/編集:アルフォンソ・キュアロン 製作:マーク・エイブラハム、エリック・ニューマン、ヒラリー・ショー、トニー・スミス、イアイン・スミス
製作総指揮:アーミアン・バーンスタイン、トーマス・A・ブリス 原作:P・D・ジェイムズ『人類の子供たち』/『トゥモロー・ワールド』(ハヤカワ・ミステリ文庫刊) 脚本:ティモシー・J・セクストン 撮影:エマニュエル・ルベツキ プロダクションデザイン:ジェグリー・カークランド、ジム・クレイ 衣装デザイン:ジェイニー・ディーマイム、アレックス・ロドリゲス 音楽:ジョン・ダヴナー
出演:クライヴ・オーウェン、ジュリアン・ムーア、マイケル・ケイン、キウェテル・イジョフォー、チャーリー・ハナム、クレア=ホープ・アシティ、パム・フェリス、ダニー・ヒューストン、ピーター・ミュラン、ワーナ・ベリーア、ボール・シャーマ、ジョセック・コーマン 

本作は新橋文化劇場にて今月5月26日(土)から上映予定とのことです。サスペンス・スリラー映画作品「ハード・キャンディ」との二本立て上映とのことです。尚、「ハードキャンディ」はR-15指定作品とのことです。
上映時間は「ハードキャンディ」が9:25/13:15/17:05〜18:50(終)、「トゥモロー・ワールド 」が11:15/15:05/18:55〜20:50(終)とのことですが、間違いがあるといけませんので、一応劇場にお問い合わせ願います(TEL:03-3431-4920/東京都港区新橋3-25-19/JR新橋駅烏森口から徒歩1分)。

以前の投稿記事で取り上げた女私立探偵"コーデリア・グレイ"が活躍する同名小説の映画化作品『女には向かない職業』の原作者である推理作家のP・D・ジェイムズのディストピア小説(理想郷ユートピアの正反対の社会、極端な管理社会で、基本的な人権を抑圧するという社会として描かれることが多いとのことです)『人類の子供たち』の映画化作品です。P・D・ジェイムズの著書は上述の『女には向かない職業』と同じく"コーデリア・グレイ"が活躍するシリーズ2作目『皮膚の下の頭蓋骨』と『ある殺意』は読んだことがありますが、残念ながら本作の原作である『人類の子供たち』は未読です。

ある日を境に人類が繁殖能力を喪失してしまった近未来の世界で...着想、テーマや世界観からしてとても興味深い重厚・濃密なヒューマンサスペンスドラマ作品やに思います。
ラスト30分頃からでしょうか、画面に釘付けとなり、拳には力が入り、"逃げ切って!"と心の中で願い叫び、眼を潤ませ、涙が頬を濡らしました。

監督のアルフォンソ・キュアロンの監督作品はJ・K・ローリングの大ヒットファンタジー小説『ハリー・ポッター』シリーズ第3巻を映画化したファミリー・ファンタジー・アドベンチャー作品「ハリー・ポッターとアズカバンの囚人」しか見たことがありませんが、原作文庫本386ページを109分の映像にまとめあげたのみならず、これだけの深みと重厚・濃密感ある作品に仕上げた手腕は秀逸やに思います。

舞台を不法移民の強制収容所に移してから、特に蜂起した移民と鎮圧に当たる政府軍と反政府組織"FISH"とで繰り広げられる白兵戦の中、ジュリアン・ムーア扮する反政府組織"FISH"を率いる元妻"ジュリアン・テイラー"に協力したことで、 クレア=ホープ・アシティ扮する人類の未来を左右する一人の少女、"キー"を巡る攻防に巻き込まれるクライヴ・オーウェン演じる主人公のエネルギー省官僚" セオ・ファロン"が懸命に"キー"と赤ちゃんを救出し、人類救済組織"ヒューマン・プロジェクト"に届けんとするシーンの迫力・質感、緊迫感・臨場感は正しく圧巻です。"セオ"が裸足やサンダル履きで足を引きづりながら繰り広げる逃走劇は危なっかしく、痛々しくて心配しながら激励してしまいます。

エンドロールで流れる歌は、どこかで聴いたことがあるなと思ったら、ジョン・レノンの『Bring On The Lutie (Freda Peeple)』でした。恥ずかしながら忘れかけていましたが、ビートルズ解散後のソロ第4弾(3弾)アルバム『マインド・ゲームズ』に収録されています。"Stop the killing (Free the people now) Do it, do it, do it, do it, do it now"の歌詞は心に染み響き、また涙してしまうのです。引き続いて流れる元Pulpのヴォーカル、ジャーヴィス・コッカーが歌う『ランニング・ザ・ワールド』も好いやに思います。ジョン・レノンがビートルズ解散後初めてリリースしたアルバム『ジョンの魂』のCDをいくら探しても見つからなかったのですが、よく考えたらLPしか持っていませんでした。

車の窓を濡らす雨の雫、頬を撫でる陽光などの束の間の描写には、寂しさと温かさを感じる気がして何とも堪りません。

濃厚・濃密な映像、寒々としながらも、暖かさを感じさせもする映像は作品の世界観に見事にマッチして映る気がします。カメラワークの僅かな揺れも臨場感とリアリティーを感じされる気がします。打ち沈み荒廃したロンドンや暗澹たる喧噪と活気が渦巻く強制収容所の雰囲気や、冷たい穏やかさが漂う郊外の空気感も好いやに思います。1980年代後期に私が目にしたロンドンとかけ離れた感じはしないのにも現実味を感じるのやも知れません。セット、オープンセットやロケセットの美術も悪くないやに思います。一昔前の近未来SF映画作品の雰囲気が微かに漂って感じられる気がしたりもします。

クライヴ・オーウェンは容貌はくど目で派手さこそ余り感じられないものの、往年の映画スターの趣きを醸した存在感ある俳優さんで、押し付けがましくない演技で魅せてくれているやに思います。"セオ"たちの手助けをする活動家時代からの友人で風刺画家の"ジャスパー・パルマー"を演じるマイケル・ケインは風采がジョン・レノンのように映り、嬉しくなります。"ジャスパー"の手配で"セオ"たちの逃亡を助けるために強制収容所入りを手引きする不正警官"シド"を演じているピーター・ミュランは濁声で最初誰かわかりませんでしたが、奇矯めいて人間臭いというか、卑しくて抜け目ない小悪党振りが良いやに思います。

観後感はずっしり...しみじみと清々しいといった感じやも知れません。

地球は一つ、向かう先は一つでも...世界は一つにはならず...それでも根拠があってかなくてか、何となくでも明日へ希望を託したり、未来へ夢を託したりして歩をすすめているような気もしますが、明日への希望や未来への夢が喪失したら...。

本作は先日発表されたSFファンタジー&ホラー・アカデミー(The Academy of Science Fiction Fantasy & Horror Films)が主催する第33回サターン賞のSF映画賞を受賞しています。因にアクション/アドベンチャー/サスペンス映画賞は以前の投稿記事で取り上げたマーティン・キャンベル監督で、ダニエル・クレイグが新生6代目"ボンド"を務めるスパイ・アクション・サスペンス・アドベンチャー映画作品「007/カジノ・ロワイヤル」です。

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posted by ウォルター at 00:08| 曇り| Comment(2) | TrackBack(2) | 鑑賞映画について(外国映画) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
映画とは関係ないのですが、一言。「ジョンの魂」はいいアルバムだと思います!(笑)失礼しました。
Posted by imagine-peace at 2007年05月16日 23:14
imagine-peaceさんへ

コメントありがとうございます。

おっしゃられる通り、『ジョンの魂』はいいアルバムと思います。シンプルでストレートに心に響く気がします。
CDも買っていたつもりだったのですが、どうも思い違いだったようで、LPからダビングしたテープで久しぶりに聴いてしみじみしてしまいました。
Posted by ウォルター at 2007年05月17日 00:55
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トゥモロー・ワールド CHILDREN OF MEN
Excerpt: 唯一の希望を失えば、人類に明日はない トゥモロー・ワールド プレミアム・エディション/クライヴ・オーウェン  2006年 英米 監督 アルフォンソ・キュアロン なかなか面白か..
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