2007年08月04日

『沈黙』

遠藤周作さんの小説『沈黙』は、前に一度読んではみたのですが、途中で玉砕してしまい、お気に入りリンクで紹介していますJ美さんのブログ『みるよむ・・・Mrs.のAZ Stories』本作の記事に触れ、また読んでみようと思いました。マーティン・スコセッシ監督が1990年代からリメイク映画化を熱望し続けていた小説で、この夏ヴァンクーバーで待望の撮影が開始される模様とのことです(ロケ地は日本とヴァンクーバーとのことです)。気の弱さ故に何度も踏み絵を踏み、転んでしまい、"ロドリゴ"を売り裏切り、キリストに対するユダにもなぞられる(転び)キリシタンの"キチジロー"を誰が演じるか興味深いです。
以前に読んだときと印象が打って変わって、最後まで一気に読めてしまいました。
厳しいキリシタン迫害の嵐が吹き荒れる島原の乱鎮圧後間もない江戸時代の日本に生きたポルトガル人パードレ(司祭・神父・宣教師)、"ロドリゴ"の運命のドラマに、何故神は"沈黙"を貫くのか、キリスト教とは何か、信仰とは何か、神とは何かというような根源的で、切実な問いが描かれいる小説やに思います。暗澹たる雰囲気が漂う(これにも好奇心をそそられる気がします)中、主人公の"ロドリゴ"らパードレが辿る苛烈な運命とキリシタンが置かれた悲惨な状況と幕府により彼らに加えられる残虐な弾圧の状況的、心理的描写には目を覆いたくなる暗澹とした思いにとらわれる(例え理由や大義があったとしても、酷過ぎます)とともに、信仰の強さ弱さや人の強さ弱さの表現には心に感じるものがあり、興味深く、お話に惹き込まれてしまいます。意外にサラリと読めてしまう印象もあるのには不思議な気がします。信仰的にのみならず、社会的にも本当に駄目(不器用)な人間にこそ救いの手は差し伸べら(関心が向けら)れてしかるべきやに思ったりもします。"ロドリゴ"の心の独白(自問自答や神への問い掛けはチョッと違うやに思いますが)、特に終盤の神への強い信仰とニヒリズムが相俟ったやの語り口は、ハードボイルドにすら感じられて、カッコイイとも思ってしまいます。私自身は特に信仰を持っていないこともあってか、結局何かハッキリとはわかりませんが、キリスト教信徒ならずとも心に(神の)"沈黙"が響く作品やに感じます。神の沈黙が神を信じるもの(のみならず)を雄弁で強くさせるのかも知れません...ただそれが、直接的に実力・効力を発揮するものではなく、ボディーブローのようだとしても限られたラウンド内で効果するとは限らないようでもありますが...。
キリシタン弾圧の裏に、信仰とは別の何かの影がちらついているのにとても嫌な気持ちを覚える気がします。多面的でもある事実と認識するものの積み重ねから(悲劇の)歴史と歴史的(悲劇の)真実を繙こうとするのやも知れませんが、事実の構成要素が曖昧だったり、いい加減だったり、中身がなかったりすることもある気がして、そのことは悩ましい気がします。
『沈黙』は流石にチョッとへヴィーでしたので、現在はこちらも以前に購入して未読のまま棚に眠らせていた(積ん読本)の一冊で、以前の投稿記事でも触れていますパーネル・ホールの(ユーモア・)ミステリ小説、(探偵)調査員・スタンリー・ヘイスティングズ・シリーズの『陪審員はつらい』を読んでいます。
posted by ウォルター at 17:06| ☀| Comment(2) | TrackBack(0) | 読んだ本について | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
ウォルターさん、再読ですね。
ざっと目を通しただけの私は、難解さばかりで歯が立たない状態です。
キチジローは、日本人の役者さんに演じてほしいです。
Posted by J美 at 2007年08月07日 15:30
J美さんへ

コメントありがとうございました。

J美さんのブログ記事に触れられたお蔭で再読することが出来て良かったです。ありがとうございました。
私も投稿記事に記していますように、再読しても尚、結局何かハッキリとはわからないのですが、感動を覚えました。
現在のところ未確認ですが、日本でロケーションするとのことですし、キチジロー役は当然日本人の役者さんが演じられるものと思っています。かなり重要な役どころと思いますので、どなたが演じられるかとても興味深いです。ただ2008年公開予定が2010年に延期されたとの情報もあり、リメイク映画化実現自体に一抹の不安を覚えなくもありません。
Posted by ウォルター at 2007年08月07日 19:44
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