2007年11月15日

「ハンニバル・ライジング/HANNIBAL RISING」

「ハンニバル・ライジング/HANNIBAL RISING」
2007年製作 米国/英国/仏国
監督:ピーター・ウェーバー 製作:ディノ・デ・ラウレンティス、マーサ・デ・ラウレンティス、タラク・ベン・アマール 製作総指揮:ジェームズ・クレイトン、ダンカン・リード 原作/脚本:トマス・ハリス『ハンニバル・ライジング』(新潮文庫) 撮影:ベン・デイヴィス プロダクションデザイン:アラン・スタルスキ 衣装デザイン:アンナ・シェパード 編集:ピエトロ・スカリア、ヴァレリオ・ポネッリ 音楽:アイラン・エシュケリ、梅林茂
出演:ギャスパー・ウリエル、コン・リー、リス・エヴァンス、ケヴィン・マクキッド、スティーヴン・ウォーターズ、リチャード・ブレイク、ドミニク・ウェスト、チャールズ・マックイグノン、アーロン・トーマス、ヘレナ・リア・タコヴシュカ、イヴァン・マレヴッチ、ゴラン・コスティッチ、インゲボルガ・ダクネイト

ジョージ・ルーカス原案(/監督/脚本/製作総指揮)による壮大なスペースオペラ・サーガ映画「スター・ウォーズ」シリーズ最終作で第3話にあたるヘイデン・クリステンセン主演のSFアドベンチャー作品「スター・ウォーズ エピソード3/シスの復讐」でのダースベイダー誕生の瞬間を目の当たりにしたときのような(歓喜の)武者震いも、本作の原作者で脚本も手掛けているトマス・ハリスのサイコ・サスペンス小説、<ハンニバル・レクター>シリーズ(※注:『ブラックサンデー』他2作は<ハンニバル・レクター>シリーズではありません。悪しからずご承知おき下さい)の第二弾『羊たちの沈黙』を読んだときとジョナサン・デミ監督、ジョディ・フォスターとアンソニー・ホプキンス主演の映画"ハンニバル・レクター"シリーズ第一作目にして、今日的サイコ・スリラー映画のエポッキメイキング足る同作の映画化作品を観たときに感じた震撼も、ハロルド・シュクターが実在した希代の連続猟奇殺人犯、エド・ゲインの生涯を描いたノンフィクション『オリジナル・サイコ―異常殺人者エド・ゲインの素顔』、コリン・ウィルソンがパトリシア・ヒットマンやドナルド・シーマンと共に過去から1980年代後半までに全世界で発生した殺人事件の数々を取り上げている殺人(人間)研究書『殺人百科』『現代殺人百科』を読んだときの衝撃も、もう一つ覚えないのは、チョッと残念なような、安心なような気もしますが、シリーズと切り離して観るというのは所詮無理ながら、序章として、一個の作品として中々見応えあるやに感じます。原作は未読ながら、文庫版約500ページを121分に飽きさせることなく、(コンパクトに)上手くまとめているのではと思います。静かなラストには冷たく清澄な空気感の中に何ともいえない情感のようなものが漂って感じられて、寒気を覚えそうで、何となく印象的でありながら、惜しい気もします。第二次世界大戦後の復興と進歩についても、もうチョッと絡めて描いて欲しかった気がします。

ギャスパー・ウリエルは復讐の情念に自らの中の怪物を目覚めさせて行く美青年、"ハンニバル・レクター"を見事に演じているやに感じます。子供の頃ドーベルマンに襲われて出来たとの左頬の傷が怪・妖しく魅力的・印象的に映る気がします。クリスピン・グローヴァーに似た雰囲気を感じる気もしたりします。ミーハー趣味やも知れませんが、当たり前ながら、本作のみならずどんな作品にせよ、「羊たちの沈黙」にはなり得ないと思うと、テコ入れの意味でも"ハンニバル"役を候補に挙がっていたヘイデン・クリステンセンに演じて欲しかった気もしなくはありません。"レディ・ムラサキ"を演じているコン・リーは好きな女優さんなので好いと思います。"ハンニバル"の復讐劇のターゲットであるドイツ軍の手下となっていた仕様もないリトアニア人逃亡兵のリーダー、"グルータス"を演じているリス・エヴァンスや第二次世界大戦中のトラウマもあっての複雑な思いを抱きつつ、"ハンニバル"を一連の猟奇殺人事件の犯人と疑い追及する"ポピール警視"に扮するドミニク・ウェストはある意味対照的な存在感と雰囲気が感じられる控え目やも知れずとも、見応えのある演技を見せてくれているやに思います。脇を固める俳優陣は役柄によっては、癖が強くなくて印象は薄目やもしれませんが、渋い確かな演技を見せてくれているやに思います。

ハンニバル・レクターの出身地にして、彼を怪物にたらしめた原因の舞台の地が、リトアニアであり、孤児となったレクターを温かく向かえるのが唯一の親戚の他界した叔父、"レクター伯爵"の未亡人が"レディ・ムラサキ"なる日本人で、日本文化なり武士道なりを説くことによって赦しの精神を芽生え、育ませようとするというのは、第二次世界大戦中"命のビザ"を発給し、多くのユダヤ人の命を救った杉原千畝さんがリトアニアの在カウナス日本総領事館領事代理を務めていたことからも興味深い気がしたりします。また"レディ・ムラサキ"の思・想いが込められた教えとは裏腹に復讐の炎を滾らせてクールで残忍、そしてある種芸術的に完遂していく"レクター"の姿には、動機や仕方は異なるものの、監督/製作も手掛けている「沈黙の要塞」でスティーヴン・セガールが演じている主人公の闘うエコロジストな消化技師、"フォレスト・タフト"をセガールファンだからなのですが、想起したりもします。日本文化についてはまだしも、武士道の何たるかについては私とてわからないですし、教えられて知るというのみにあらず、順を追って体得していくものでもあるような気がします。刀は武士の魂と言われますし、刀を抜かないのも武士の美徳とされてもいたようです。刀は禍々しい凶器にも成り下がるでしょう。ましてや怪物が手にしては...。菅原文太さんは抉らなかったのに...と思ったりもします。

<ハンニバル・レクター>シリーズの第三弾『ハンニバル』を読んで最も印象的で要と感じている箇所について、本作では具体的な描写がなされていますが、私が思い描いていたのとは異なった印象の残忍さ、恐怖、パニック、怒り、無力感、侘しさ、心細さ、嫌悪、そして哀しさを携えた演出、雰囲気や空気感をしてなされているのには物足りなさよりもむしろ安堵を感じます。

以前、お気に入りリンクで紹介していますふるさんのブログ『ふるちんの「頭の中は魑魅魍魎」』の記事『ハンニバル・ライジング』に寄せさせて頂いたコメントにも記しましたが、本作の原作小説には、当然期待を抱きつつも、面白いか否かではなく、読むに耐え得るかどうか、些か不安と恐怖を感じてもいて、"怪物""ハンニバル・レクター"の人格(人間)形成の要因(・過程)については、『ハンニバル』での記述(・描写)を読むに止めておいた方が良いのかしらという気がしたりもしてしまい、購入したものの未読(積ん読)のまま棚にささったままになっています。本作を観ても尚、深い哀しみを目の当たりにする勇気がなくて、中々読む気にはなれません。読んでいないのはそればかりではないのですが...。

ミーシャの面影を見ているのかしら..。

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posted by ウォルター at 00:39| ☔| Comment(6) | TrackBack(7) | 鑑賞映画について(外国映画) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
>購入したものの未読(積ん読)のまま棚にささったままになっています。

私の場合、本だけ読んで、映画は未見です(苦笑)

昨今衝撃を受けたり、武者震いを覚える作品になかなか出会えませんが、ウォルターさんと同じ気分なのかも知れません。

コリン・ウィルソンで衝撃を受けたとは、なんだか同じ趣向の持ち主だということが改めて確認されたような(笑)(失礼)

今思い出したのですが、ロンドン・ダンジョンというかなりグロテスクなテーマパーク?に行ったことを思い出しました。歴代の殺人鬼や、その現場を再現したモノで、かなりの衝撃を覚えました。

では、戯言にて失礼します。
Posted by ふる at 2007年11月15日 12:03
ふるさんへ

コメント及びトラックバックありがとうございました。

原作ものの映画化作品で気に入ったものについては、極力原作も読んでみようと思って、本を購入するだけはするのですが、特に時間が経ってしまったりすると未読(積ん読)蔵書のままになってしまいがちです(苦笑)。

ふるさんにはあたらないやも知れませんし、良し悪しだとか好ましいか好ましからざるかだとかはさておき、感性が変わったり、枯れたり...鈍ったりして来ているのかしらと感じることもあります。自分の感性に合った映画や本を見出す嗅覚が鈍っているのか、そもそも私の感性になぞ合った作品が少ないのかも知れないと思ったりもします。

同じ趣向を持てているとしたら、幸いにして嬉しい気がします(笑)。

ロンドン・ダンジョンというのはつい先だってテレビの何の番組だったかで取り上げられているのを観ましたが、相当恐そうですネ。中学生の時分に富士急ハイランドのお化け屋敷(現在開催されている『超・戦慄迷宮』なるお化け屋敷はかなり恐いとのことですが、当時は、一般的にはそれ程恐くなかったようです)に入って、卒倒しそうになった私が行ったとしたら、衝撃を覚えるどころの騒ぎでは済まないと思います。トラウマにさえなり得そうな気がしてしまいます(笑)。
Posted by ウォルター at 2007年11月15日 19:02
「ハンニバル・ライジング」だけは見ていないんです。あのキャラクターには、興味深いものがあるのですが、アンソニー・ホプキンスのイメージが壊れないかな?と思ってです。
この点に関してのみなら、ネタバレにならず、お答え頂けますか?
Posted by fighterk at 2007年11月15日 22:03
fighterkさんへ

コメントありがとうございます。

あくまで私の印象ですが、本作におけるギャスパー・ウリエルによる若き日の"ハンニバル・レクター"を観たとしても、アンソニー・ホプキンスによる"ハンニバル・レクター博士"のイメージは強烈過ぎて、壊れるということはないやに思います。というより、もしかしたら容貌のイメージとしてあの"ハンニバル・レクター博士"をして、この若き"ハンニバル・レクター"かという印象を受けることはあるやも知れません。

投稿記事にも記しましたが、シリーズと切り離して観るというのは所詮無理ながらも、意識し過ぎずに序章として、一個の作品として観れたなら、見応えを感じやすいかなと思ったりします。
Posted by ウォルター at 2007年11月16日 00:17
今日は。

トラックバックありがとう!私も早速TBさせていただきました。

映画としてもなかなか良く出来た作品だと思いますが、是非原作も読んでもらいたいな〜。積ん読だけじゃもったいないよ〜。

レクターの役は、ヘイデンでも良さそうだけど、彼はもはやダースベイダーだからね・・。やっぱり、余計なイメージのないギャスパーの方で正解だと思うよ。
あと、悪い逃亡兵を演じたリス・エヴァンスは、「ノッティング・ヒル」のイメージが強かったので、こんなにも冷徹な役を演じる彼を見て、やっぱり役者って凄いな〜・・なんて思いました。
Posted by ごみつ at 2007年11月16日 12:41
ごみつさんへ

コメントありがとうございました。

そうですネ、...読まねばならないとは思いつつ...(汗笑)。

これは飽くまで私の考えの一つで、多分に趣味・嗜好によるものですが、投稿記事にも記しましたように、ミーハー趣味やも知れませんが、当前ながら本作のみならずどんな作品にせよ「羊たちの沈黙」にはなり得ないと思うと、テコ入れの意味でも若き"ハンニバル・レクター"役を候補に挙がっていたヘイデン・クリステンセンに演じて欲しかった気もしなくはありません。ヘイデン・クリステンセンにとっても、「スター・ウォーズ」シリーズにおける"アナキン・スカイウォーカー=ダース・ベイダー"のイメージを早く払拭もしくは薄らげつつ、役立たせる意味でも役を演じられていたらと思ったりもします。「ハンニバル」でジョディ・フォスターがFBI特別捜査官"クラリス・スターリング”役を残念ながら辞退した際も、テコ入れの意味では後任候補の一人に挙っていた『X-ファイル』シリーズで"ダナ・スカリー捜査官"を演じているギリアン・アンダーソンに役を引き継いで欲しかったです。ショーン・コネリーやハリソン・フォードのようにというか、ロバート・パトリックのようにでしょうか...(汗笑)。
これも記事に書いていますが、ギャスパー・ウリエルは復讐の情念に自らの中の怪物を目覚めさせて行く美青年、"ハンニバル・レクター"を見事に演じているやに感じます。
リス・エヴァンスは、ごみつさんが挙げられている「 ノッティングヒルの恋人 」やロバート・カーライルと共演している「家族のかたち」での役のイメージとは打って変わったダニエル・クレイグ主演の「Jの悲劇」での怪しい容姿、風貌と変質的雰囲気を醸す不気味なストーカー振りも恐かったです。幅広い役を見事に演じ分けて魅せてくれる演技力と、独特の不思議な存在感と雰囲気を持った希有なタイプの役者さんやに思います。
Posted by ウォルター at 2007年11月16日 19:08
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