2009年12月24日

『まひるの月を追いかけて』

昨年購入した後、未読のままになっていた(積ん読本)の一冊、恩田陸さんによる恩田ワールド全開のミステリーロードノベルとの『まひるの月を追いかけて』を読みました。謎めいた奇妙な初見女性二人旅...手探りの駆け引きと疑心暗鬼を持て余しているうちに...ゆったりと濃密に時間は流れ...気づきに触れていく...昼下がりの木漏れ日を浴び、堅く冷たい空気を呼吸し、感じながら徒然に漫然と旅をしていて、ふと目覚める...空虚で満ち足りた日常的非日常の雰囲気と空気感の漂いが感じられるようで、何となくついつい惹き込まれてしまいます。
お話やその展開はさておき、異母兄妹という恩田作品ではお馴染みともいえる登場人物の設定や、構成に旨みが感じられる気がしますし、異母兄妹である”静”と”渡部研吾”との会話にはさして感じないのですが、二人旅をする”静”と”君原優佳利”との会話や、心の揺れ動きの描写はドラマチックで、ラストなぞは心ざわつかされるものがあり、興味深いものを感じます。さしてミステリーは感じませんが、微かで朧げで不明瞭な感じで、仄かに悪意というか、意地悪さが感じられたりもして、不安なミステリアスさを感じます。
ところどころに挿入されているおとぎ話はよくできていて、効いている気もします…があまり、心惹かれるものは感じません。
なぜか寺尾聰さんの1981年第23回レコード大賞を受賞した大ヒット曲『ルビーの指環』を想起したりもしてしまいます。

非日常(的日常)を過ごして迎える日常には、どんな物語が待ち受けているのでしょうか…。

文庫版巻末に寄せられている佐野史郎さんによる解説には大いにうなずかされるところがあります。

またしてもいつもどおり散漫で要領を得ない記事となってしまいました。


allcinema ONLINE 映画データベース

時効事案も含めて未解決事件が一つでも多く早期の解決を見ることを望むものです。
posted by ウォルター at 11:41| ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | 読んだ本について | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年10月05日

『GHOSTS』

先日、Robert B. Parkerの『Looking for Rachel Wallace』が久しぶりに読みたくなり、書棚を探していましたら、かわりに見覚えのないエド・マクベインの『GHOSTS』『KILLER'S CHOICE』のそれぞれペンギン・ブックスとPan Books版のペーパーバックを見つけました。エド・マクベインのペーパーバックなぞいつ買っていたのかと首を傾げつつ、取り敢えず、早速『GHOSTS』の方を読みはじめてみましたが、かつて読んだ記憶は一向に蘇って来ないまま、活字の小ささと、単語力の低下と欠如に四苦八苦の末、何とか読み終えてしまいました。
エド・マクベインによる警察小説の名シリーズ『87分署シリーズ』の一作で、落ち着いたストーリー展開をしていて、スリリングではないですが、警察小説にオカルトテイストが加味されていて、ミステリアスにサスペンスフルな雰囲気と空気の漂いを感じる気がしますし、やや面食らうところもありましたが、構成は巧く、主人公の二級刑事、"スティーブ・キャレラ"をはじめ、等身大の生身の刑事たちによる地道で手堅く、現実的で理にかなった捜査と彼らの私生活や思い、そしてニューヨークをモデルにしたとの"アイソラ"なる架空の街の雰囲気や空気感が違和感なくリアルに感じられるように描かれている気がします。
超常・超自然・心霊現象や霊能力に惑わされ、踊らされ、導かれた捜査の結末は呆気なく衝撃的...。
もう一冊の『KILLER'S CHOICE』はまだ未読で、今は以前に読んで良くわからなかったジョン・ダニングの『The Holland Suggestions』のPocket Star Books版ペーパーバックを読んでいます。
それにしても、いつの間に買ったのかしら。因に『KILLER'S CHOICE』には"ミ¥500"と記された値札シールが貼られています。それと『Looking for Rachel Wallace』のペーパーバック版はどこにいったのかしら。

時効事案も含めて未解決事件が一つでも多く早期の解決を見ることを望むものです。
posted by ウォルター at 22:51| ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 読んだ本について | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年08月28日

『不安な童話』

以前の投稿記事『未読の本(積ん読本)』で購入後未読のままになっていた本(積ん読本)の中の一冊、恩田陸さんの『不安な童話』を読みました。
何やら...と思わせられるプロローグにはじまり、唐突に感じられる物語のはじまりと、不安なというより何とも不思議な感覚に陥らされつつ、飽きの来ないバラエティーに富んだある意味新鮮なストーリー展開と、だからこそ時折強く感じさせられるやの恩田陸テイストの魅力にどっぷりとでいうわけでもありませんが、ついつい惹き込まれて読み進めてしまいました。私が好きな恩田陸さんが綴る物語が醸す独特のファンタジックでミステリアスな雰囲気だったり、気象や天気の描写による空気感だったり、感覚描写だったりが強く見て取れる、感じられはするのですが、それが作品全体に行き渡っている風には感じられなかったりもします。それがこの作品の新し味の面白味の一つなのやも知れませんが...。“ノスタルジアの魔術師”と称される恩田陸さんですが、本作にはノスタルジアというよりも回想、追憶感のようなものを感じる気がします。色々なモチーフが軽やかにうまくまとめられているやに思います。ただし、クライマックスからラストにかけての展開や描写はプロローグを見事に踏襲したものとなっていたりもしますし、巧いとは思いつつも、些か物足りなさを覚えてしまいます。その余地、余韻は残されているとは感じつつも、もっとなのか違ったかたちでなのか、ファンタジックでミステリアスなまま閉じて欲しかった気もしたりします。
不思議の内に読み進んでしまうといった飽きさせない微妙(びみょう・みみょう)なバランスのお話の運びをした、興味深い作品やに感じます。娯楽色を感じる気もします。
まずは『不安な童話』の題名に違わぬ雰囲気や感覚をしたお話やに思います。

時効事案も含めて未解決事件が一つでも多く早期の解決を見ることを望むものです。
posted by ウォルター at 22:22| ☔| Comment(0) | TrackBack(0) | 読んだ本について | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年03月02日

今更ながら『PLUTO』第5巻

先日JR大船駅構内のコンコース内(エキナカというのかしら...)に本屋さんがあるのに初めて気づき、中に入って豊富とはいい難い品揃えの棚を眺めると私が現在読んでいる数少ない漫画の一作で、発刊時買いそびれてしまったままになっていた手塚治虫先生の人気SF漫画『鉄腕アトム』のワンエピソード『地上最大のロボット』を浦沢直樹さんがリメイクしているSFミステリー・サスペンス漫画『PLUTO』の第5巻が目に入り即座に購入しました。帰宅してからの楽しみと、横須賀線の車内では読むまい、と思っていたのですが、列車の座席に腰を下ろした刹那、我慢は脆くも崩れ、カバンから本屋さんのカバーがかかった漫画を取り出し、ページを捲りはじめると直ぐに作品に惹き込まれてしまい、東逗子駅を出た頃、Act.35『応答せよゲジヒトの巻』のラストクライマックスでは電車中にも関わらず、涙に眼を潤ませ、嗚咽を押し殺すのに苦労するほどでした。第1巻にも大いに感涙しますが、本作には感動も然ることながら、壮大で深遠な只ならぬ何かを感じる、感じさせられる気がします。ミステリー・サスペンスとしても魅せられます。人と人との関わりに於ける人の存在意識に於ける人の感情の苦悩の悲しみなのかを感じる気がしたりもします。
"ゲジヒト"の首の描写は何ともイイと思います。
漫画を読むのが不得手な私のもう一作の愛読漫画、あずまきよひこさんの『よつばと!』にも大いに涙する私です...。

相変らず鑑賞映画についての投稿記事を書こうにも、筆というかキーボードを打つ手が遅々として進みません...。
posted by ウォルター at 00:12| ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | 読んだ本について | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年12月05日

『図書室の海』

先日から吉川英治文学新人賞、本屋大賞を受賞し、多部未華子さん主演、貫地谷しほりさんら共演で映画化(全校生徒が24時間かけて80キロを歩く高校の伝統行事『歩行祭』にある思いを胸にのぞむ多部未華子扮する主人公の高校3年生の女子生徒、"甲田貴子"のクラスメイトの一人、"後藤梨香"役の貫地谷しほりさんの演技や存在感は嫌味なく面白くて魅力的やに感じます)された青春小説『夜のピクニック』の前日譚で、多部美華子さんや加藤ローサさんら主演によりオリジナルビデオ化された短編小説『ピクニックの準備』など10話が収録されている恩田陸さんの短編集『図書室の海』を読みはじめているのですが、中々読み進められず、まだ5話目の『ある映画の記憶』を読み終えたところです。『ある映画の記憶』なぞは昔から朧げに抱いている心象とシンクロするようでもありますし、どの作品も興味深い気はしますが、今一つ釈然としないものも感じる気がします。ただ3話目の『イサオ・オサリヴァンを捜して』は何やらとても魅力的で、強く惹き付けられるものがあり、何度も読み返してしまっています。ジュブナイル的というのか、地に足がついていないようなリアリティーとフィクショナルな残酷さが漂う蒼色のファンタジーとでもいった感じがします。そう大それたことではなさそうでもある"真実の恐怖"とは何なのかとても興味をそそられます。エイドリアン・ライン監督、ティム・ロビンス主演のホラー映画作品「ジェイコブス・ラダー」を引き合いに出しているのは面白く感じますが、わかるようなわからないような気もします。"875高地で"の記述からジョン・アーヴィン監督の戦争ドラマ映画作品「ハンバーガー・ヒル」を想起してしまいました("ハンバーガー・ヒル"は937高地ですが...)。
"千年王国"とは...新たな脅威・驚異(光と影)をこの世界にもたらしている冷戦下におけるコンピュータネットワーク社会の幕開けについて示唆していたりもするかしら...それとも...。
恩田作品の幾つかで絶妙に醸して感じられる雰囲気や空気感の描写は今のところ然程読みとれないのは残念ですが、短編ということもあってか、読み手にそれぞれ自分なりの推理と想像の余地を大きく残して喚起させてくてはいますし、ファンタジックで何処か突き放した感じがするのにもそそられなくはない気がします。
これまで投稿記事で幾度も記していますが、以前投稿記事で取り上げていますピーター・ウェーバー監督、ギャスパー・ウリエル主演で映画化された「ハンニバル・レクター」シリーズ最新作の同名犯罪サスペンス・ドラマのトマス・ハリスによる原作のサイコ・サスペンス小説、<ハンニバル・レクター>シリーズ(※注:『ブラックサンデー』他2作は<ハンニバル・レクター>シリーズではありません。悪しからずご承知おき下さい)の最新刊『ハンニバル・ライジング』も未だ未読(積ん読)のまま棚にささっていますし、本書も出来るだけ早く読み終えられればと思っています。

allcinema ONLINE 映画データベース

ゴミ箱に放り込めはしても、どうしても消去仕切れない感情...。
posted by ウォルター at 22:43| ☀| Comment(2) | TrackBack(1) | 読んだ本について | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年09月11日

『陪審員はつらい』

先日来読んでいて、途中先日の投稿記事で記しましたずっと探していて去る6月にやっと見つけることが出来た購入後未読の都筑道夫さんの短編推理小説『退職刑事3』をを読みはじめてしまい、中断していたパーネル・ホールの(ユーモア・)ミステリ小説、私立探偵調査員・スタンリー・ヘイスティングのすったもんだの活躍を描いた『陪審員はつらい』を読み終えました。
以前の投稿記事でも触れていますように、パーネル・ホールの小説は好きで、日本で出版されているタイトルは本作と同じくスタンリー・ヘイスティングズ・シリーズの『罠から逃げたい』パズルレディ・シリーズ第2弾の『パズルレディと赤いニシン』を除いて殆ど読んでいると思います。
彼の小説並びにスタンリー・ヘイスティングズ・シリーズを久しぶりに読んで、本作の中で主人公の事故専門の調査員をしている私立探偵の"スタンリー・ヘイスティング"が過去に関わった事件の幾つかについて触れられていますが、全く覚えておらず、これまで順不同に読んでいたことに気づきました。それからふと、あらためて思いましたが、"スタンリー・ヘイスティング"という名前は中々カッコいいということと、江口寿史さんによるカバーイラストは作品にピッタリで、とても素敵ということです。ヘイスティングズといえば、ミステリの女王、アガサ・クリスティの『エルキュール・ポアロ』シリーズにも"アーサー・ヘイスティングズ"大尉が登場しますネ。
本作でも相変わらず何とも間が悪いことこの上ない、"ヘイスティングズ"の運命と試練に振り回されながらの活躍が描かれるといういつもとさして代わり映えのしないパターンのお話な気もしますが、陪審員の交代要員に選任されるという設定から(本作の場合ニューヨーク州に於ける)陪審制や陪審員の仕事について、これまで映画、小説やメディアで見聞きしたのとは若干異なった視点で、気づかなかった、知らなかった点について{審理無効要件、(場合によっては長期に渡る)陪審員選任過程、(民事訴訟ならではの)審理の退屈さや過失責任採決にあたり、被告が複数の場合の責任の割り振りなどなどの煩雑さ}も描かれていてとても興味深く読みました。"ヘイスティングズ"の持ち前の間の悪さと運の強さを発揮しての中々の名(迷)探偵振りに推理も冴えて、痛快でカッコイイと思ったりもしないではありませんし、へなちょこで俗物的だったりもしますが(するからこそかも知れませんが)、"ヘイスティングズ"の気持ちには少なからずシンパシーを感じますし、彼は愛すべきキャラクターに映る気がします。
いつもながらこれという何かはないですが、肩肘張らずに何となく作品の、"ヘイスティングズ"の魅力に惹かれて読んでしまいます。
都会庶民的なところも"ヘイスティングズ"の魅力やに思います。

お気に入りリンクで紹介していたimagine-peaceさんのブログ『英語喫茶 ☆オーバー・ザ・スカイ ☆ [ English Cafe : Over the Sky : Bilingual Blog: ] ★(英会話・英語日記)』は転居中で、タイトルも『World Network is Yours !』に変更されました。
posted by ウォルター at 19:50| ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | 読んだ本について | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年09月05日

ようやく読みました

ずっと探していて去る6月にやっと見つけることが出来た購入後未読の都筑道夫さんの短編推理小説『退職刑事3』をようやく読みました。本作は短編が7作収録されていて、バラエティー豊かで難怪な殺人事件の謎を現職刑事の息子に相談されるかつては硬骨の刑事、今や恍惚の境に入りかけている父親がその経験に裏打ちされた鋭い推理力で鮮やかに解きほぐす(事件の解決に至るものなのかどうかは定かではない気もしてしまいますが...)といったウィット、ユーモアと恐らくは私の子供の頃を舞台にしていると思われることもあり、郷愁を感じる語り口、空気感と雰囲気をした安楽椅子探偵小説やに思います。本シリーズは第1集から読んでいて、どのお話も構成は代わり映えしませんし、サスペンスフルでもスリリングでもありませんし、その推理はやや強引というか、ご都合主義に感じなくもないですし、正直読み終えてみるとあんなに家中を探しまわってまで読みたい作品かとも思いますが、何かついつい惹き込まれて読んでしまう魅力がある気がします。主人公の退職刑事がお嫁さんに煎れてもらったお茶をグイと飲みつつ、現職刑事の息子と頭を突き合わせて推理を巡らせる様を想像すると何だかワクワクする気がします。最後に収録されている『料金不足の死体』というタイトルは面白い気がします。各話初出は季刊・月刊誌掲載とのことでもありますので、もしかしたら、一気に読んでしまうよりは、一話ずつ時間を置いて読んでみても面白いやも知れません。第4集以降も買って読むのだろうと思います。

現在、もう既にかなり強い勢いで雨が降り注いでいますが、強い台風9号が上陸しそうで心配です。被害が最小であることを祈ります。
posted by ウォルター at 18:44| ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 読んだ本について | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年08月04日

『沈黙』

遠藤周作さんの小説『沈黙』は、前に一度読んではみたのですが、途中で玉砕してしまい、お気に入りリンクで紹介していますJ美さんのブログ『みるよむ・・・Mrs.のAZ Stories』本作の記事に触れ、また読んでみようと思いました。マーティン・スコセッシ監督が1990年代からリメイク映画化を熱望し続けていた小説で、この夏ヴァンクーバーで待望の撮影が開始される模様とのことです(ロケ地は日本とヴァンクーバーとのことです)。気の弱さ故に何度も踏み絵を踏み、転んでしまい、"ロドリゴ"を売り裏切り、キリストに対するユダにもなぞられる(転び)キリシタンの"キチジロー"を誰が演じるか興味深いです。
以前に読んだときと印象が打って変わって、最後まで一気に読めてしまいました。
厳しいキリシタン迫害の嵐が吹き荒れる島原の乱鎮圧後間もない江戸時代の日本に生きたポルトガル人パードレ(司祭・神父・宣教師)、"ロドリゴ"の運命のドラマに、何故神は"沈黙"を貫くのか、キリスト教とは何か、信仰とは何か、神とは何かというような根源的で、切実な問いが描かれいる小説やに思います。暗澹たる雰囲気が漂う(これにも好奇心をそそられる気がします)中、主人公の"ロドリゴ"らパードレが辿る苛烈な運命とキリシタンが置かれた悲惨な状況と幕府により彼らに加えられる残虐な弾圧の状況的、心理的描写には目を覆いたくなる暗澹とした思いにとらわれる(例え理由や大義があったとしても、酷過ぎます)とともに、信仰の強さ弱さや人の強さ弱さの表現には心に感じるものがあり、興味深く、お話に惹き込まれてしまいます。意外にサラリと読めてしまう印象もあるのには不思議な気がします。信仰的にのみならず、社会的にも本当に駄目(不器用)な人間にこそ救いの手は差し伸べら(関心が向けら)れてしかるべきやに思ったりもします。"ロドリゴ"の心の独白(自問自答や神への問い掛けはチョッと違うやに思いますが)、特に終盤の神への強い信仰とニヒリズムが相俟ったやの語り口は、ハードボイルドにすら感じられて、カッコイイとも思ってしまいます。私自身は特に信仰を持っていないこともあってか、結局何かハッキリとはわかりませんが、キリスト教信徒ならずとも心に(神の)"沈黙"が響く作品やに感じます。神の沈黙が神を信じるもの(のみならず)を雄弁で強くさせるのかも知れません...ただそれが、直接的に実力・効力を発揮するものではなく、ボディーブローのようだとしても限られたラウンド内で効果するとは限らないようでもありますが...。
キリシタン弾圧の裏に、信仰とは別の何かの影がちらついているのにとても嫌な気持ちを覚える気がします。多面的でもある事実と認識するものの積み重ねから(悲劇の)歴史と歴史的(悲劇の)真実を繙こうとするのやも知れませんが、事実の構成要素が曖昧だったり、いい加減だったり、中身がなかったりすることもある気がして、そのことは悩ましい気がします。
『沈黙』は流石にチョッとへヴィーでしたので、現在はこちらも以前に購入して未読のまま棚に眠らせていた(積ん読本)の一冊で、以前の投稿記事でも触れていますパーネル・ホールの(ユーモア・)ミステリ小説、(探偵)調査員・スタンリー・ヘイスティングズ・シリーズの『陪審員はつらい』を読んでいます。
posted by ウォルター at 17:06| ☀| Comment(2) | TrackBack(0) | 読んだ本について | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年08月02日

『偽のデュー警部』

先日の投稿記事でも触れていましたが、購入して未読のまま棚に眠らせていた(積ん読本)の一冊、ピーター・ラヴゼイの船上ミステリ小説『偽のデュー警部』を読みました。思いの外私好みで面白かったです。
序盤のロンドンの花屋の女性店員、"アロマ・ウェブスター"の夢見がちというか、何というか、妄想倒錯的ロマンスがらみのくだりこそチョッと苛立や不快感を感じる気がして、以前に読んだピーター・ラヴゼイ作品もこういった作風だったかしらと些か戸惑いを感じなくもありませんでしたが、さりげなく堂々とした伏線の敷き方に、微かな違和感や疑惑のかぐわいに、危うさを漂わせるお話の構成・展開・持って行き方は絶妙な気がします。決して派手派手しかったり、おどろおどろしかったりはしませんが、華やかに軽やかで、遊び心と粋を感じて、どっぷりという感じではありませんが、思わず惹き込まれて行ってしまうというような、しっかりしたミステリーやに思います。結構くすりとさせられるところもありますし、終いはにやりというか、苦笑いさせられる気がします。航海旅行には、素敵で思わぬ運命の出会い巡り合いと転機(打算誤算)の物語とミステリーが待ち受けているのやも知れません...。
訳者である中村保男さんによる文庫版巻末のあとがきには本作の映画化が決定したとのことで、映画版への期待も述べられていますが、現在に至るまで果たされていないのはとても残念な気がします。

メジャー・リーグ、ニューヨーク・ヤンキースの右のリリーバーで、ますだおかだの岡田圭石さんにチョッと似ているスコット・プロクター投手がトレード期限ギリギリの現地時間7月31日にロサンゼルス・ドジャースに放出したとのことで、チョッピリ寂しいです。ドジャーズからは内外野を守れるユーティリティープレーヤーでスイッチヒッターのウィルソン・ベテミット選手を獲得したとのことです。両選手の新天地での活躍を願うものです。31日のシカゴ・ホワイトソックス戦での2本塁打を含め7月にメジャー月間自己最多の13本の本塁打を放った松井秀喜選手の好調ぶりは嬉しい限りです。
posted by ウォルター at 00:04| ☔| Comment(0) | TrackBack(1) | 読んだ本について | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年07月27日

『三月は深き紅の淵を』

ずっと探していて、先日せっかくようやく見つけることが出来た購入後未読の都筑道夫さんの短編推理小説『退職刑事 3』は未だに読みはじめてもいないままで、代わりに恩田陸さんの『三月は深き紅の淵を』を読んでしまいました。
作者不詳、発行部数もごく僅かで、持ち主はたった一人だけに、たった一晩だけ貸し出すことを許された幻の稀覯本『三月は深き紅の淵を』にまつわる4編のオムニバス中編ミステリ集です。どう表現したら良いのやら、ストーリー(の面白さ)によってというよりも、登場人物に語らせる言葉やさせる行いによって小説・物語への想いや小説・物語の魅力と魔力をとても興味深く説かれているようで、強く惹き付けられるものがあります。何だか、これという何かは良くわかりませんが、悪戯っぽくユーモラスだったり、意地悪だったり、切なかったり、センチメンタルだったり、遣る瀬なかったり、残酷だったり、ファンタジックだったり、ミステリアスだったりする不思議で興味深い作品やに思います。
因にトマス・ハリスのサイコサスペンス小説<ハンニバル・レクター>シリーズ(※注:『ブラックサンデー』他2作は<ハンニバル・レクター>シリーズではありません。悪しからずご承知おき下さい)の最新刊『ハンニバル・ライジング』もまだ未読(積ん読)のまま棚にささっていますし、逃避癖の表れでしょうか、こちらも以前に購入して未読のまま棚に眠らせていた(積ん読本)の一冊で、以前の投稿記事でも触れていますピーター・ラヴゼイの船上ミステリ小説『偽のデュー警部』を読みはじめてしまっています。
posted by ウォルター at 00:26| ☁| Comment(2) | TrackBack(2) | 読んだ本について | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年07月15日

『六番目の小夜子』

以前NHK教育テレビの『ドラマ愛の詩』で鈴木杏さん主演によりドラマ化放送された恩田陸さんの学園ファンタジー・サスペンス・ミステリー『六番目の小夜子』を読みました。以前にも一度読もうとしたのですが、ドラマ化作と若干展開、登場人物や設定などが異なることもあってか、何となく序盤で挫折してしまい、久しぶりの試みになりましたが、今回は最後まで読み通せました。面白い!という感じではなく、今一つピンと来ないところもなくはないのですが、丁寧で繊細な人物(心理)描写に謎めいて、不思議な雰囲気の漂いを感じて、中々緊迫感もあったりして、ついつい惹き込まれてしまいました。
怒りなのか、抗いなのか(と共に)他愛ないようで、意地悪もしくは残酷な正体のはっきりしない幻想・妄想(倒錯)的好奇というか、悪意のようなものを感じる気がします。
望むべくは、個性を消されようとすることで、個性(というか性格)を自覚することなのやも知れないと思ったりもします。
私だけかも知れませんが、恩田作品の魅力の一つと思っている空気感や懐かしさが薄く感じられるのには物足りない気がします。
やはり、不思議な雰囲気の漂いが魅力の作品やに思います。
"津村沙世子"の顔は、栗山千明さんの顔がちらつくばかりで、思い描けません...。
posted by ウォルター at 00:38| ☁| Comment(2) | TrackBack(1) | 読んだ本について | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年06月30日

『百鬼夜行抄』文庫版最新第9巻

先日今市子さん原作の私の大好きな妖怪・ホラー・ミステリー漫画『百鬼夜行抄』の待望の文庫版最新刊を購入し、読みました。些かこれまで以上に込み入ったお話のような気もしなくはありませんが、堪能しましたし、これから読み返す毎に、深みを感じられるのではと楽しみに思っています。"律"君と"司"ちゃんの微妙な関係(といっても、中の良い従弟姉同士といってしまえばそうなのやも知れませんが...)も然ることながら、"三郎"さんと"晶"ちゃん、二人の行く末が益々気になります。6編目に収録されている『鬼の面』は、かなり怖いお話に感じますが...どうなのかしら。相変わらず漫画を読むのは上手くなりません。といっても、現在は読んでいるのは、本作の他には、浦沢直樹さんと手塚治虫先生原作の『PLUTO/プルートウ』あずまきよひこさん原作の『よつばと!』くらいなのですが...。


本日は、予てからご案内申し上げておりました『第13回 三遊亭京楽 「チャリティー寄席」 大笑い!!ミュージカル環境落語!!』を観に行って参ります。FDNYのロゴ刺繍キャップを被って行くかも知れません。
posted by ウォルター at 07:32| ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 読んだ本について | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年06月05日

読書メモ

前の投稿記事、『ようやく見つかりました』で触れた以前付けていた読書メモに"面白い!!"と記してある小説は、先に紹介したマーガレット・ミラーのサスペンス『狙った獣』の他に、南カリフォルニア大学医学部小児科の臨床の教授を務めるジョナサン・ケラーマンの小児精神科医"アレッックス”とLAPDの刑事"マイロ"のコンビによるサイコ・ミステリ『大きな枝が折れる時』、ジョン・ダニングの元警官の古書店主"クリフォード(クリフ)・ジェーンウェイ"が稀覯本に絡んだ事件を追うハードボイルド・ミステリ『死の蔵書』『幻の特装本』そしてラジオ放送が黄金期を向かえていた1942年を舞台にしたミステリ『深夜特別放送』、デイヴィッド・マーティンの泣かせるサイコスリラー『嘘、そして沈黙』とグロテスクな(だけでない)サイコ・スリラー『過去、そして惨劇の始まり』そして異色のヴァンパイア・ストーリー+サイコスリラー『死にいたる愛』、デボラ・クロンビーのロンドン警視庁の"ダンカン・キンケイド"警視と部下の女性刑事"ジェマ・ジェイムズ"との関係と活躍を描いたミステリ、警視ダンカン・キンケイドシリーズ、元FBI捜査官、ポール・リンゼイのFBI捜査官"マーク・デブリン"を主人公とするリアルでエンターテイメントなFBIストーリー『目撃』『宿敵』、未見ですが原題の「第一の大罪」としてフランク・シナトラ主演で映画化もされているローレンス・サンダースのベストセラー、壮絶で物悲しい警察小説+サイコスリラー巨編『魔性の殺人ー第一の殺人』、ハードボイルド作家として知られるローレン・D・エスルマンのシャーロック・ホームズと吸血鬼ドラキュラのパスティーシュ『シャーロック・ホームズ対ドラキュラ―あるいは血まみれ伯爵の冒険』、シオドア・スタージョンの独特の雰囲気を醸す異色吸血鬼・ダーク・ファンタジー・ホラー・ミステリ『きみの血を』、ピーター・へイニングが編集した古典から異色のヴァンパイア短編小説のオムニバス集『ヴァンパイア・コレクション』の一遍リチャード・レイモンドの色々と想像を喚起させてくれる『出血者』、そして私の大好きな三作、篠原哲雄監督、鈴木京香主演の同名映画化作品も大好きな(記事は依然書き上がっていませんが...)恩田陸さんの極上心理ミステリ『木曜組曲』、以前の投稿記事で取り上げているブライアン・デ・パルマ監督、ジョシュ・ハートネット主演による同名映画化作品の原作、ジェイムズ・エルロイの深遠なサイコ・サスペンスドラマ『ブラック・ダリア』とメアリ・W. ウォーカーの女性事件記者モリー・ケイツシリーズ第2作スリリングで緊迫感溢れ、深みのあるサスペンス・ミステリ『神の名のもとに』です。

allcinema ONLINE 映画データベース
posted by ウォルター at 18:55| ☁| Comment(2) | TrackBack(0) | 読んだ本について | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年06月01日

『光の帝国―常野物語』

先日の投稿記事でシャーロット・アームストロングのサスペンス小説『毒薬と小壜』を読み始めていると記しましたが、序盤で早々に躓いてしまい、代わりに恩田陸さんのファンタジー小説『光の帝国―常野物語』を読みました。特殊な力を持つ常野(とこの)一族の物語を描いた短編集で、各々様々なエッセンスを織り込みつつ、繋がりを持たせ、大切な何かについて通して綴られている気がします。…この世界では常に良いことも悪いことも、楽しく喜ばしいこと辛く悲しいことも起こっていますし、知っていること知らないことも、分かることも分からないこともあります...目を背けず、覆い隠すことなく、有体を受止めたままに継いで行かねば...行くよりないやに思ったりします…。不思議な優しささや温かみと恐さや切なさのような何かを感じる気がします。以前の投稿記事で取り上げた『象と耳鳴り』を読んだときに感じた懐かしさ、雰囲気や空気感はやや薄らいで感じられる気がしますが、昔から朧げに抱いている心象とシンクロするようでとても興味深く、惹かれる作品です。『常野物語』シリーズとして本作に引き続き、長編小説の『蒲公英草紙 - 常野物語』『エンド・ゲーム―常野物語』が出版されているとのことですので、何れ読んでみたいと思います。本作は、NHKの連続ドラマシリーズ『ドラマDモード』にて前田愛さん主演でドラマ化されているとのことでが、今のところDVDはリリースされていない模様ですので、再放送されない限り観れません。

以前の投稿記事で取り上げていますロン・ハワード監督、トム・ハンクス主演のミステリー・サスペンス映画作品「ダ・ヴィンチ・コード」のダン・ブラウンによる原作小説を先日購入してみましたが、当然まだ読めていません。上・中・下巻には別れていますが、各巻は割と薄めで、活字も大き目なので、読めそうな自信が沸く気はします。
posted by ウォルター at 12:46| ☁| Comment(2) | TrackBack(1) | 読んだ本について | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年05月26日

『ダウンタウンの通り雨』

『ハンニバル・ライジング』も読まねばと思いつつ、先日に引き続き随分以前に購入して未読のまま棚に眠らせていた(積ん読本)都筑道夫さんの短編推理小説『退職刑事 3』を読もうと本棚を探していましたら、これまた懐かしや都筑道夫さんの元ボクサーの私立探偵"西蓮寺剛”を主人公とした短編集『ダウンタウンの通り雨』が目に止まり、表題の一遍『ダウンタウンの通り雨』を久しぶりも久しぶりに読んでしまいました。
この本を読んでいた中学生から専門学校生の頃は大藪春彦さんの"伊達邦彦"に"西城秀夫"シリーズ、泡坂妻夫さんの"亜愛一郎"シリーズ、仁木悦子さんの"仁木兄妹”に"三影潤"シリーズなぞを良く読んでいました。本作しかり、"西蓮寺剛"シリーズの『くわえ煙草で死にたい』『苦くて甘い心臓』、"伊達邦彦"シリーズの『日銀ダイヤ作戦』『マンハッタン核作戦』、"仁木兄妹"シリーズの『刺のある樹』や"三影潤"シリーズの『冷えきった街』など内容も然ることながら、タイトルに妙を感じる気がします。きちんと探してみたわけではないですが、書棚には見当たらないタイトルが随分ある気がします...。
本作はシリーズとしては、三作目ですが、読んだのはこの作品が初めてでした。当時も今もハワイには行ったことがないので、実感としてはわからないのですが、日差しの強いハワイの空、情景がまざまざと思い描け、雰囲気や空気感が感じられる気がします。そしてその海を渡った異国の地にも何かドメスティックな懐かしさのようなものが漂って感じられる気もします。本作も主人公の"西蓮寺剛”も、カート・キャノンの『酔いどれ探偵街を行く』と主人公の酔いどれ私立探偵、"おれ"と比べると(比べなくても...と言っても『酔いどれ探偵街を行く』は印象ばかりで、内容は良くは覚えていないのですが...)ハードボイルドさは大人しめな気もしますが、かといってソフトボイルドというでもない気もしますし、ライトボイルドとでも言った感じやに思います。匂い立つといった感じではないですが、確かに醸し出されているハードボイルドさが、魅力に感じられたりします。はたしてダウンタウンの通り雨は、事件の嘘を - 罪を - 過ちを覆い隠す白い雲を洗い流し、真実を明かしたのかしら...。
因に『退職刑事 3』はまだ見つかっていません。 何時読めるのかしら...『ハンニバル・ライジング』も...。逃避癖の表れでしょうか、こちらも以前に購入して未読のまま棚に眠らせていた(積ん読本)の一冊でシャーロット・アームストロングの『毒薬の小壜』なるサスペンス小説を読み始めてしまっています。何かふやけてしまっていました。


お陰様で体調の方は大分良くなりました。本日午前中に先日受けた血液検査の結果を訊きに病院へ行って来ました。結果は必ずしも問題ないというものではありませんでしたが、疾患があるとかということではありませんでしたので、一安心であります。ウィルスによる症状とのことでした。まだ少し微熱が残っていますが、このまま経過すれば、じきに治まるだろうとのことでした。
posted by ウォルター at 17:46| ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 読んだ本について | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年04月04日

『百日紅の下にて』

随分以前に購入して未読のまま棚に眠らせていた(積ん読本)都筑道夫さんの短編推理小説『退職刑事 3』を読もうと本棚を探していましたら、都筑道夫さん選で、日本ペンクラブ編の短編ミステリー・アンソロジー『名探偵が八人』が目に止まり、その中の一遍、横溝正史さん著書で終戦後、南方、ニューギニアのウエワクより復員した金田一耕助が最初に解き明かす事件を描いた短編小説『百日紅の下にて』を久しぶりに読んでしまいました(初めは"さるすべり"と読めませんでした)。
焼け崩れた廃墟に哀しく、懐かしく、愛おしく、色鮮やかな赤い花を咲かせる百日紅の下で、無念(未練)の内に逝った戦友の想い願いを酌んだ金田一耕助により解き明かされるあの事件の謎と真実による哀しみと救いが心を静かに揺さぶるやに思います。
直後に金田一耕助が向かう瀬戸内に浮かぶ一孤島で直面する難事件についてより面白く読む観る助けになるやも知れません。
因に『退職刑事 3』はまだ見つかっていません。
posted by ウォルター at 00:32| ☔| Comment(0) | TrackBack(0) | 読んだ本について | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年03月15日

『地獄で仏』

先日ふとテレビのチャンネルを廻したらNHK教育テレビで民俗学者の大月隆寛さんが『芸術劇場へようこそ』という番組内の『若手演劇人、大いに語る』という情報コーナーでトーク司会をされていました(ゲストは本谷有希子さん、倉持裕さんと長塚圭史さん〔長塚京三さんの息子さん〕でした)。最近めっきりBS2の『BSマンガ夜話』の放送もなく(3月27日〜31日の5日間、BS2にて『BSアニメ夜話スペシャル とことん!あしたのジョー』の放送があります)、目にすることがなかったので、久しぶりにその姿を見れて嬉しい気がして、演劇のことは良く知らないし、わからないのですが、トークコーナーは最後まで観ました。世界の劇場『ペーパー・ミル・プレーハウス』の紹介と現代舞踏家の勅使河原三郎さん振付、美術、照明、衣装、音楽構成、出演の現代舞踏公演「ガラスノ牙』の劇場中継は観ませんでした。

これを期に随分以前に購入して未読のまま棚に眠らせていた(積ん読本)大月さんと消しゴム版画家・エッセイストの故ナンシー関さんの共著対談集『地獄で仏』を読みました。私にはかなり辛辣な物言いに感じられ、些か戸惑いながらも、語り口調のせいもあってか、ぴりりとした読み触りが新鮮で惹き込まれてしまいました。同感するところも少なくないのですが、なにせアクセルの踏み込みが急で強く、その上ブレーキは弱めで、危なっかしい気もしますので、今だから余裕を持って読めるというところもあるのやも知れません。"大月さんも御自愛ください"のナンシーさんの言葉が印象的です。
メディア表現・報道評やメディアに於ける人物評についてのスタンスには読むべきところが少なくないやに思ったりもします。

ナンシー関さんについては、良く知りませんが、現在の私よりも若くして亡くなられた希代の消しゴム版画家である彼女の冥福を心よりお祈りします。彼女に似顔絵を彫ってもらえず、斬られなかった著名人は何となく残念な気もします。

大月さんではないですが、何だか具合が悪い気がします...。
posted by ウォルター at 12:25| ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 読んだ本について | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年12月19日

『象と耳鳴り』

本作の著者である恩田陸さん著作の学園サスペンス推理小説でNHKで鈴木杏さん主演で連続TVドラマ化もされた『六番目の小夜子』に登場する関根秋のお父さんで元敏腕判事の関根多佳雄を主人公に、彼の長男で検事の春、長女で弁護士の夏、奥さんの桃代もがかわるがわる(安楽椅子)探偵となって(残念ながら秋は登場しません)、その豊富な経験と卓越した知力と観察力でそこにある鍵も見出し、事件を解決していく短編ミステリ集です。

恩田さんは私と同世代ですが、”ノスタルジアの魔術師”と呼ばれるだけあり、また都筑道夫先生の『退職刑事』シリーズが好きなこともあってか、推理小説である本作にもどこか懐かしさを感じ、傑出した作品とは思いませんが、惹かれてしまいます。著者自身が文庫本のあとがきで書いています本格ミステリの条件"納得"や"説得"についてはミステリとしての仕掛けやお話の展開はさておき、作品の醸す雰囲気、特に気象や天気の描写による空気感からすると申し分ないやに思います。着想と説得のさせ様との狭間にある危う気さに魅力を感じてそそられる気がします。本格ミステリの傑作たり得る条件としている"驚異"については然程感じられませんが...。

ミステリと意識しすぎずに読んだ方がすんなりとお話に浸れやすいやも知れません。
posted by ウォルター at 00:17| ☁| Comment(2) | TrackBack(2) | 読んだ本について | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年12月04日

『切り裂き魔の森』

以前の投稿記事で取り上げた『アマンダ』の著者アンドリュー・クラヴァンが弟さんのローレンスと共作し、共同ペンネームのマーガレット・トレーシー名義で発表したデビュー作で、1984年のMWAペーパーバック賞(アメリカ探偵作家クラブ)の最優秀ペイパーバック賞を受賞した作品とのことです。

サスペンスフルさ、スリリングさ、ショッキングさ、ドラマチックさは特筆すべき程には感じられませんし、ミスリードやあっといわせるようなからくりが用意されているわけでもないやに思いますが、限られたスチュエーションに、限られた登場人物で心理・背景描写に含みを持たせたり、敢えて描き切らずに読者に想像を仕向けたりしつつも正々堂々、直球勝負の展開で押しきるやの、サイコ・サスペンスというより心理サスペンス(ニューロティックサスペンスというのでしょうか)で、面白いという形容より、上手く表現出来ないのですが、ゆるぎない巧みと妙を感じる、読み応えのある作品との印象です。

はじめの内は主人公の借家ながら静かな、人里離れた緑に囲まれた家で、大工を生業とする頼もしく、頼りがいがあり、なによりも優しい夫"ポール"、夫にそっくりな12歳の息子"ポール・ジュニア"と自分にそっくりな5歳の娘"メアリー"と平凡で満ち足りた生活を送る主婦"ジョーン・ホワイト"夫人に対して、"ホワイト"一家の隣人で借家の家主もある釣り好きの芸術家"ジョナサン・コーネル"が抱く嘲笑とまでは行きませんが、(保守的、)平凡に過ぎて、野暮ったい嫌いがあり、些か苛立を覚えるやの印象は受けなくもないですが、彼同様、次第に彼女に親しみとシンパーを感じ、どんな美点にも勝るとも劣らない人としての美徳を身につけていることに気づかされ、惹き付けられて行ってしまうのです。

『アマンダ』同様"ホワイト"夫人の娘"メアリー"の愛らしい描写が愛し気で素敵やに思います。

瀟洒な町を恐怖に陥れる裕福な女性ばかりが被害者の残忍極まりない連続猟奇殺人そのものよりも、ある事実から夫が被害者の気の毒な女性たちにいろいろなことをした凶悪な忌まわしい殺人犯ではないだろうかとの強い疑念を抱くに至ったことによる"ホワイト"夫人の恐怖、嫌悪感、憤悶に満ち、意識や思いなのかコンプレックスなのかが交差する心理描写はギリギリとした緊迫感に満ちていそうでいて、何となく調子っぱずれなようでもあって、面白くて読み応えがあり、特にその夫との情交の場面で"相手を増悪しながらも体が受け入れてしまう”ことに対する心情は筆舌に尽くし難い恥辱なのか、酷さなのか、虚しさなのか、切なさなのか、恥辱なのかやの物凄くおぞましい何かを痛烈痛切に感じる気がします。直接的残酷描写はありませんで、血なまぐささよりも空恐ろしさとおぞましさを感じさせられるやに思います。後からも恐怖がじわりと襲い来たり、明かされぬままの、そしてこれから起こり得る恐怖を想像させられもするやに思います。繰り返しのようになりますが、日常の中でただならぬ、危機・決定・致命的不審・信感を近しい誰かに抱いてしまうことで苛まれる恐怖、嫌悪、軽蔑、憤りと日常の営みを続けることのジレンマが微妙に巧く描写表現されているやに思います。


愛、献身、幸福、笑顔、不安、疑惑、苛立、困惑、恐怖、葛藤、嫌悪、増悪、絶望感、決意、しゃにむさ、そしてまともさと母である人の強さ。
posted by ウォルター at 02:04| ☀| Comment(2) | TrackBack(0) | 読んだ本について | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年11月03日

『ナッソーの夜』

このブログの投稿記事でも何度となく触れています最新第21作目「カジノロワイヤル」の公開を目前に控えているスパイ・アクション映画「007」シリーズは全て観ていますが、原作は全ては読めていません。読んだ中で一番好きなのはイアン・フレミング原作、井上一夫さん訳の映画化されている『バラと拳銃/From a View To
a Kill』や同じく映画化されている表題作の『読後消却すべし/FOR YOUR EYES ONLY』も含む短編5編が収録されている短編集『007号の冒険/FOR YOUR EYES ONLY』(現邦題は『007/バラと拳銃』)の最後の一編『ナッソーの夜/Quantum of Solac』が最も好きです。ナッソーのイギリスバハマ総督官邸のディナーに招待されたジェームズ・ボンドに総督が差し向かいで酒を酌み交わしながら、ある夫婦のはげしくておもしろい人生ドラマ(ボンド曰く"人間の情熱がなまに出ている本物の人間喜劇、どこの政府が作ったどんな秘密情報部の謀略よりも、もっと正当なゲームをやる運命の主役の人間喜劇だった")について淡々切々と語る模様が描き綴られている素敵な作品です。総督が人間関係の基本的条件(人情の死は人間関係の死)に発明した本人曰くちょっと大げさな呼び名"慰藉(いしゃ)の量の法則"は大変興味深いやに思います。

【慰藉(いしゃ)】(スル)なぐさめいたわること。
posted by ウォルター at 00:24| ☔| Comment(2) | TrackBack(1) | 読んだ本について | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする